「鳴瀬川河畔の家」のように洪水に悩まされてきた地方では、家族が安全な場所に避難できるように日頃から舟を用意していて、「避難舟」や「用心舟」と呼ばれていました。
この舟は、宮城県石巻市に住む老齢の「舟大工(ふなだいく)」が、昔ながらの技法や儀式によって建造したもので、今日ではたいへん貴重なものということができます。
舟の建造にあたっての主な儀式には、次のようなものがあります。
シキハジメ
シキ(舟の底の部分)になる材を作業台の上に乗せ、その上に供え物を供えて舟大工と舟主が拝みます。作業の安全と建造の成功とを祈る行事です。
フネオサメ
完成した舟を舟大工から注文主に引き渡す儀礼です。舟の引き渡しは、舟を舟大工の娘にたとえ、舟主へ嫁入りさせる儀礼に見立てて、婚礼の披露宴の形を取ることが多いと言われています。